2006年05月06日

『輪廻』

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『輪廻』 ★★★★☆

ホラーとして見ればある意味完成されていると言える。
怖さの度合いとかでなく、安心して観ていられるというか。演出や物語でなく、少し漠然としているかもしれないが、色調、雰囲気から。
『呪怨』が意味あと付けでの、凶暴なまでに無方向に突き進む恐怖とするなら、本作は先ず意味有りき、の整然とした恐怖。
“輪廻転生”という題材というか思想、有りき。
しかし、自体の意味は世間に浸透していようと具現化されたものではない。それを地に着かせるために、先ず現実にあった事件を立ち上げ、起点にし、劇中劇という形でさらに身を纏う。ただ、巧みに輪郭はぼかす。それを補い、さらに身を纏う形で劇中劇の役者たち、起点となる事件に吸い寄せられるよう取り込まれる人間たちを、唯一形あるものとして提示させる入れ子のような構造。

35年前にあった大量無差別殺人。ひとりの殺人者と、11人の被害者。
作中で、事件を題材に映画が作られる。椎名桔平演じる映画監督・松村がメガホンを取る「記憶」という作品。そこに役者として参加することになる、優香演じる新人女優・杉浦渚ら12人の役者たち。
35年前にあった事件は、余計な情報を与えられず、おぼろげに、しかし確かに存在する。演じる役者や監督たちは目に見え存在するが、仮の姿を演じるに過ぎない。
彼らは、35年前と現在を一方向で映し出すに過ぎない。
それを結ぶ存在として、輪廻転生した者たちがいる。
彼らに当然自覚はない。(一部を除いて)
だが、彼らがその自覚を取り戻した瞬間、一般になら輪廻転生と聞き、「昔、私は何々だったのよ」と話のネタにしかならないものが、恐怖へと変わる。前世での最後の記憶がイコール恐怖だからだ。
事件自体は恐怖を想起させるものだが、イコール恐怖にはなり得ない。恐怖は、劇中劇のタイトルにあるよう“記憶”にある。
あくまで恐怖の本質、物語の核心を見抜かれようとはしない。

うまいな、と思うのはこれ大まかに捉えて決して特出した題材でないからこそ。
それこそ「本当にあった怖い話」にあるような題材。それを、中心に位置する事件自体を幾重に囲みながら二重三重と身を纏う構造にする。ありがちが故に次第に進行していく新たな恐怖を鵜呑みにさせ、実は肝要となる部分から目を逸らそうとする。事件をまったく別角度からアプローチしていく香里奈演じる大学生・木下弥生の存在もそう。恐怖を前に、彼女の存在の意味を深くは考えない。
縦方向にも横方向にも、35年前の事件から派生した物語や人間が配置されるため、リアルタイムで何が進行しているのかを掴みきれない。否。掴みきれていると錯覚するが、元から勝手に想像し得る発想でしかない。

個人的なことを言えばさほどの恐怖は感じないで、逆に“サプライズ”に至るまでの道筋や雰囲気に思わずニヤついてしまい、感情を言葉に置き換えるなら楽しくてしょうがないのだが、同席した連れや一緒に退場してきた人たちの話を聞くと、『呪怨』と同じく、恐怖自体が生活に密着しているので怖い、そして、気持ちが悪い、らしい。この手の作品から受ける生理的反応は人によって極端に左右したりするから一概にどう、と断じるのは難しいが、一応のところ着地点を見付けるのなら、怖く、気持ち悪いのだろう。
一見、無作為に無差別に選ばれた犠牲者たちの恐怖を描ききった『呪怨』も結局そういうところが評価されてのことだろうから、清水崇の真骨頂健在、と言えるかもしれない。

キャスティング的にも一見驚きを持って迎えるだろうけれど、実のところそうでもない。
『呪怨』にしても、メジャーに成り上がった途端、アイドル(女優)の奥菜恵、酒井法子がキャスティングされているわけだし、普通にホラーといえばメジャーであるほど、玄人受けする女優を廃したりするもの。
ただ、優香がそれなり器用なのは知っていたが、ホラー作品にこれだけフィットするとは思わなかった。キャラクターの個性が一方に振り切れているので形にしやすいのはあるにしても、彼女のバラエティ番組から受けるイメージを完全に覆しての熱演あってのこと。
香里奈、椎名桔平らは思ったとおり。演出のおかげか、昨年一気に映画での露出があるも、新人としての拙さが残った香里奈もそのことをさほど感じないまま。
また、ホラー作品常連となりつつある、松本まりか(というか『ノロイ』の印象が強いだけだけれど)、清水組常連の藤貴子、諏訪太郎の活躍も嬉しい。
posted by やすゑ at 23:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 (ら) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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