2006年05月06日

『たまもの』

たまもの.jpg

『たまもの』 ★★★☆☆

盲目。狂気。無垢。
どの言葉が一番にしっくり来るのだろう。
ふとしたきっかけで知り合った郵便局員を、時に執拗に、時に盲目的に。別れる意味も分からない。心の隙間を何かと思う。自ら言葉を発することない無垢な女性がひたすらに追いかける純情。ストーカーと化してしまえば意味することの説明もひとことに簡単に済むのだけれど、監督のいまおかしんじと主演の林由美香はそうとはさせない。

ボウリング場で働く、林由美香演じる愛子。
彼女はただ請われるままにボウリング場の店長である男の性欲を受け止め、一方で、郵便局員である彼、吉岡睦雄演じる良男に尽くす。思いを弁当に託し毎日毎日彼の元に届ける。疎ましく思う彼の気持ちを立場を慮らない彼女を無神経とは呼べない。呼べない魅力が彼女にある。無垢、と呼ぶのが一番しっくりくるか。
濡れ場でのあえぎ声でしか言葉を発することのない彼女。コミカルな動きで心情を表現したかと思えば、何の冗談かと思える動きも。まったくに掴みどころのない彼女だが、一途に、愛らしい魅力に溢れる。だからこそ、もどかしい。
コケティッシュなのとは違う。冒頭の防波堤の上でひとり弁当を食す彼女の姿からして、妙に乾いたイメージがある。反面、30歳半ばとは思えぬ可愛らしさ。特に目を見広げた時の、白目がちな大きな目をくりくりさせるさまは子供のよう。
しかし、同時に狂気を感じるのも確か。この恋愛劇が辿り着く先から巻き戻しての結論ではない。大きな目が魅力的であることと同時に、目の下の隈が常に意識される。彼女の、ボウリング愛に満ちた部屋はコミカルかつ愛すべきものであるが、喋るボウリング球に象徴される妄想も同居する。
コミカルと狂気。現実と幻想。愛らしく妄執的。その狭間を行き来する。
全て超越したところで濡れ場の彼女。思いつめたような、痛切な姿が彼女の本当の姿なのだと。だが、その時だけにしか自らをさらけ出すことのできない彼女にまたもどかしさを募らせる。堂々巡り。

シンプルに分かりやすく魅力をふりまく、良男の同僚であり彼を誘惑する、華沢レモン演じる郁美。押しの強さは愛子に通じるがとにかく分かりやすい。愛子を捨て、郁美になびく気持ちは十分すぎるほどに分かる。だが、振れたとしてもまだ愛子に戻ろうとする反動力にあがなえない気持ちも分かる。また、戻る。

良くも悪くも、林由美香の魅力に全編彩られ縛られた一品。
posted by やすゑ at 23:26| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画 (た) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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