2006年05月03日

『シムソンズ』

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『シムソンズ』 ★★★★★

公開翌日「かわいさ金メダル級」とベタな見出しで舞台挨拶の模様が新聞に掲載されていた…。そのことはともかく、作品はまさにその通り。ガールズムービーの傑作。
と同時に、磯村一路『がんばっていきまっしょい』、矢口史靖『ウォーターボーイズ』、周防正行『シコふんじゃった』に連なる、スポーツ青春劇である。が、先に挙げた作品があくまで各々の監督作品としてあったのに比べると本作は、シムソンズメンバーを演じる彼女たちの作品。監督の佐藤祐市がテレビ畑出身で、自らの作家性を見せようとするより、素材に合わす作りに慣れがあったこともある。映画監督として経験が少ないこともある。あるが、そんな説明付けを吹き飛ばす彼女たちの今を生きる存在感。
シムソンズのメンバーを演じる加藤ローサ、藤井美菜(ダントツにストーンを投げるフォームが美しい)、高橋真唯、星井七瀬。演じ手としてはまだ新人に近い4人だが、逆に手垢がつかず、キャラクターと演じ手の境界線が曖昧となり、観客との距離を確実に縮める効果を生み出している。加藤ローサ演じるシムソンズのリーダー和子が、田中圭演じるカーリング界のスター選手・加藤真人に憧れを抱くところなど何の違和感さえない。(多少のコント臭さはあるけれど)
はっきり言えば、加藤ローサなど明らかに女優としては未熟なのだけれど、本作においては気になるのは序盤だけ。周りを固める面々がそれなりに小慣れていることもあろうし、妙に背伸びしていないところに役に嵌まり込むよう効果を得ているから。
ちなみに脇を固める男優陣は、大泉洋、高田延彦、松重豊、山本浩司、夏八木勲…と、個性豊かな、一部除いて、なぜか男が惚れるような男が揃っている。

中心に据わる、カーリングというスポーツ。
舞台となる北海道常呂町でいくらメジャーであろうとも全国的にマイナーな感は否めない。
しかし、それが勝ち戦の条件になるのだ。だいたい矢口史靖がここ最近得意としてヒットを飛ばしているこの手の作品『ウォーターボーイズ』、『スウィングガールズ』(これはスポーツではないけれど)にしても、男のシンクロ、ビッグバンド、と当時はマイナー、もしくは知名度はさほどなかった。それに倣うとしたらカーリングというスポーツに目を付けたのはうまい。
加え、公開時期の絶妙さ。冬季オリンピックの真っ只中に持ってくる強かさ。私も鑑賞前日(つまり映画公開初日)、カーリングの試合をテレビで生中継されていたのを観て、ルールも分からないのに嵌まった。(ただ本作を観ればおおよそのルールは理解できるのでカーリング入門編としてもお勧めしたし) その試合…対カナダ戦で、日本が素晴らしい戦いを見せ勝利を収めたことも嵌まった一因であるが、そこでスーパーヒットを連発していたのが、“リアル”シムソンズの一員であった小野寺歩である。(ソルトレークに出場した“リアル”シムソンズだがトリノに連続出場しているのは彼女ともうひとり林弓枝のふたり)
ちなみにカーリング、「氷上のチェス」とも呼ばれるが、純血日本人の私からすれば「氷上の将棋」だろう!とも言いたくもなるが、ハウスから弾かれたストーンが1エンド内で以降何の役割を果たさないことを考えればやはり「氷上のチェス」なんだろう。

話が横道に逸れた。本筋に戻す。
物語は単純明快。ひとこと、彼女たちの成長物語と要約することができる。
ただそれは、環境の違いや性の違いから厳然とある、重ねあうには距離があり、身近ではあるが傍観者としての立場に自分があるから。
重ねあうことができないから、この時代を思い返すような甘酸っぱさはない。ただ、リアルタイムに彼女たちと同じ時代を生きる立場の人たちにとっては、現在の立ち位置の不確かさ、自分を認めてもらいたい欲求、その先にある未来…と、重みをもってして本作を観るかもしれない。
彼女たちは、北海道の片田舎、高校を卒業してもそこから出ることも叶わず、気に入った相手を巡り合い、この地に埋もれたまま一生を終える。という未来が明確に想像できる。できるが、それはどの年代にもあるように、平凡さへの拒否に繋がる。繋がることが、意識して変えることができるのがこの年代の素晴らしいところだ。平凡さを否定するつもりはない。ないが、自分の未来を自分で掴むという至極シンプルな意気込み。姿。
傍観者としては、応援したくなるじゃないか。
だからこそ、大泉洋演じるカーリングのコーチや、夏八木勲演じる伝説のカーラー、松重豊演じる「シムソンズ」を追うテレビディレクター、彼女たちの家族の心情がよく分かる。と同時に、自分の立ち位置も理解する。

クライマックス、クライマックスの舞台として用意されるカーリング大会の一試合一試合に、彼女の一挙手一投足に一喜一憂する。
当然のこととして、彼女たちの努力だったり友情だったりは全てここに収束されるからだ。地味と思われるスポーツであり、実際血沸き踊るというより、じっくり見据えるという見方が近い気がする。それまでの流れが、どちらかと言うと騒がしく喜怒哀楽の輪郭がはっきりしていたからこそ、余計に落ち着く感がある。試合結果が眼前に提示されたとしても。
ただ、カーリング大会の終わりにあるものに彼女たちは何かを求めるのではない。回りの人間たちも同様だ。
その先にある未来に、その何かを求める。
そして、未来に立った彼女たちの姿を見た時、心は平穏を失う。
posted by やすゑ at 21:30| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画 (さ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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